1台40万円が普通になったぱちんこ機について(後編)

●1台40万円が普通になったぱちんこ機について(後編)

前回のコラムでもお伝えした通り、ぱちんこの製作費は主に「開発費」と「材料費」の2つに分類される。
それぞれについて、軽く説明したいと思う。

・「開発費」(ここでは液晶機を主として扱うことにする)
開発費を大きく分類すると、CGやアニメーションなどの液晶素材費、作った素材にぱちんこらしい動きやエフェクトなどを付けて映像にするオーサリング費、その作った映像を実装するプログラミング費と、多少大雑把な分類ではあるが、以上の3つをトータルした液晶開発費と、盤面開発費、試作費、金型費をトータルした役物開発費の主に2つに分類される。その他にも、サウンド製作費やデバッグ費用など細かいものを入れればキリが無いので割愛する。

液晶素材費、オーサリング費、プログラミング費というのは、それぞれが対になっているため、素材が増えればオーサリングもプログラミングも増えるということがわかる。
そのため、少しであったとしても演出物量が増えれば、掛け算的に費用は掛かる。

また、これらの開発費は人月計算といって、「人ひとりが一カ月(20日計算)働く」として、トータルの物量を計算するのが一般的である。
人月単価は、大体80万円から100万円が一般的な相場であり、これらの開発費はメーカーにもよるが、どこも5億円程度はかけている。

当然のことながら、これよりも少なく開発しているメーカーもあれば、この倍以上かけているメーカーもある。
特に、3DCGは非常にコストがかかるので、特に新規開発系の3DCGを中心としたぱちんこ機は開発費が非常に高いと想像できる。

役物開発費は、ギミックが多くなればなるほど駆動検証を行うために試作費用がかさむ。
また、ぱちんこ機は金型点数も多く、各社の盤面を見てわかる通り、多くの部品が一点モノとなっている。
ざっくりとした金額ではあるが、最低でも役物開発費で2〜3億円ほどかけていると思われる。

以上のことより、開発費は版権費用やその他の雑費などをトータルして、おおよそ10億円前後かかっているのが現状である。
これを大きく下回る場合には、ユーザーがパッと見ただけでもすぐわかるレベルであるのは間違いない。


・「材料費」
材料費を大きく分類すると、盤面役物費と基板費用、液晶パネル費用の3つに分類される。
ぱちんこの液晶映像やプログラムなどは全て基板で行われており、それぞれの基板は役割がそれぞれ分かれている上、多くの基板が使われており、規則や不正対策を考えても、ここを削減するのは不可能であろう。
材料費のトータル金額は盤面だけで考えると、1台あたり最低10万円ぐらいはかかり、平均的な金額でいえば15万円前後ぐらいが一般的な金額ではなかろうか。

他業種の製造業で考えると、材料費は30%〜40%ぐらいが一般的であり、材料費を見ても他業種ともそん色のない数字であるといえる。
当然のことながら、本体枠は別計算である。(念のためにつけ足しておくが、昔からの慣習で、どのメーカーも枠は赤字である)

以上の数値より、ざっくりではあるが、1台40万円としてコンスタントに1万台販売することができれば、1台あたり数万円かかる特許使用料や、ジャスラックなどの著作権使用料、代行店などに支払う販売手数料や、会社としての労務費や経費などを支払っても黒字になる。

しかしながら、1台40万円が定価であり、実質の販売価格は下回ることが多く、開発費や材料費もプロジェクトによって様々であり、昨今の状況では1万台で赤字になっているプロジェクトも少なくない。
今年の上場会社の決算状況などを見ても、ほとんどの会社が赤字決算であり、細かくプロジェクト毎に費用計算しても、多くのプロジェクトで赤字だが、1つのヒット機種で大きく儲けてトータルで黒字という会社も少なくない。それに、今の時代、1万台売れる機械はほとんどなく、各社1万台以上売れた機械は、おそらく上記のコストで収まっていないだろう。

2回に分けてメーカー側の視点から販売価格高騰についての説明、いや言い訳をしてきたが、私が何を言いたいかというと、もはや従来型のビジネススキームは崩壊しているといっても過言ではない。ということである。

私のような開発者からいえば、1台40万円は(現状)「やむを得ない」が、ビジネスとしては(既に)「あり得ない」、すなわち、今までと同じやり方、作り方、考え方の延長線上では「業界全体は良くならない」ということである。ただし、単純にコストを下げるだけではダメだ。今までのレベル以上のものを低コストで作るスキームが必要になる。ただ残念なことに、それが未だに見えていないメーカーが多いのは嘆かわしいことである。