喫煙客のマナーを信じたユニークな分煙

東海地方のパチンコチェーンで、喫煙可能なホール内に、あえて喫煙専用ルームを設けるというユニークな分煙で顧客満足度を向上させているお店がある。背景にあるのは喫煙客の気づかい。強制的なルールを設けず分煙ができる手法は、飲食店にとって参考になる事例だ。

店舗の分煙といえば、喫煙エリアと禁煙エリアを分離するのが一般的だ。ところが、東海地方を中心にパチンコホールを経営する「善都」(本社:愛知県)の「ZENT岡崎インター店」ではホールを喫煙可としたうえで、ホール内に喫煙専用ルームを設けるというユニークな分煙を実施している。ホール内でタバコを吸えるため、煙の苦手なお客にとっては居心地の悪い空間になっているように思えるが、そうではない。ホール内では、タバコの煙やニオイはほとんどない。なぜなら、喫煙客の多くは喫煙専用ルームに行ってタバコを吸っているため、ホールでパチンコを打ちながら吸っているお客をほとんど見かけないのだ。

「ホール内に4箇所、喫煙専用ルームを設けています。当店はパチンコ、スロットを合わせて1526台という規模なので、ホール内のどの位置からも気軽に立ち寄れる場所に喫煙専用ルームを配置しています」と同店の尾ア純平店長は語る。



善都は以前から、分煙に積極的に取り組んできた。かつては、座席でタバコを吸うだけでなく、ホール内を歩きながら吸うお客も多く、ホールの床が灰で汚れたり、タバコの火が他のお客の服をこがす危険性などもあったという。同チェーンは1995年にホールを禁煙にした「ZENT小坂店」、2007年にはホールを禁煙にしたうえで喫煙専用ルームを設ける形で分煙を実施した「ZENT可児店」をオープンしている。

 可児店では、ホールを禁煙にしたが、11年6月に開店した岡崎インター店でホール喫煙可を選択した。その理由は何か。「近年、お客様の様子を見ていて感じるのは、吸わない人よりも吸う人のほうがタバコの煙の行方を気にして、隣の人に迷惑をかけていないか気配りしているということです。喫煙客のマナーの向上、気づかいを肌で感じており、店側からお客様に禁煙をお願いするより、自発的なマナーにお任せしてもよいのでは、と思いました」と尾ア店長。こういったお客の気づかいは、最近の飲食店においてもよく見られることだ。

 こうして岡崎インター店では、ホールが喫煙可にも関わらず、喫煙専用ルームをホール内に設けるという店づくりが実施された。開業後、周囲に他のお客がいない場合は、ホールで喫煙するお客も、店内が混雑している場合は、喫煙専用ルームに向かうという。喫煙専用ルームには常にお客がいる状況で「稼働率は高いと感じています」(尾ア店長)。岡崎インター店以降、善都では同じタイプのお店を3店舗オープンしている。



こうした分煙を意識した店づくりは、お店の付加価値を上げる戦略の一環だと、尾ア店長は語る。「当店では、あらゆる層のお客様に、ストレスフリーで楽しんでいただきたいと考えています。店内の各所にはベンチを設け、自由に休憩できるようになっていますし、女性客の増加に合わせて、女性専用の休憩室も設けています」。こうした対策を実行している理由について「分煙対策をはじめ、一見、直接利益には結びつかないようなことに思えるのですが、お客様の満足度を上げることで、結果的にはリピーターを増やすことになっています。店自体も通路の幅を広くとっており、ゆったりとした設計です。実は詰め込もうと思えばもっと台数を増やせます。しかし、目先の利益を追うより、お客様にとって心地よい空間とサービスを提供することが、最終的には利益につながると考えております」。

 事実、同店は駅から離れた郊外店ながら、1500を超えるパチンコ、スロットの台はほぼ満席。その光景は壮観だった。

「喫煙可能な空間に、喫煙専用ルームを設ける」という、お客の気づかいに委ねた分煙方法が、非喫煙客の反発も生まず成功を収めているという事実には驚かされる。このノウハウは飲食店にもそのまま応用できるため、これから分煙を考えている店主にとって大いに参考になるだろう。何より、顧客満足度を上げ、リピーターを増やすために、分煙を通じた快適な空間づくりが大きな役割を果たしていることを改めて認識できる事例といえる。