ギャンブル依存深刻 推定患者200万人、国の対応鈍く

パチンコをやめたいのにやめられない−。そんな状態に陥る「ギャンブル依存症」の問題にあらためて注目が集まっている。兵庫県小野市が4月、生活保護受給者にギャンブルでの浪費を禁じ、浪費を見つけた市民に情報提供を義務付けた「福祉給付制度適正化条例」を施行。小野市には医師や弁護士から「依存症の治療を優先すべきだ」との批判が寄せられた。ただ、医療体制は全国的に貧弱で抜本的な対策を見いだせないのが現状だ。

 「たとえ生活保護を打ち切ると言われても、やめられないんです」

 保護費支給日の毎月1日、全額をパチンコなどに使い果たす福岡県内の男性(34)は、うつろな表情で打ち明けた。

 午前9時ごろ銀行で約12万円の保護費をすべて下ろし、その場で家賃や光熱水費を振り込む。近所のスーパーを2往復し、米や即席めんなど、1カ月分の食料を1万5千円分ほど購入。手元に残った約5万円を握りしめ昼前には近所のパチンコ店へ。「われに返るのは、金が尽きるか閉店するかしたときです」

 勝つことはまれにしかない。「でも打っているときは、絶対に10万円、20万円になるという根拠のない自信がある」

   ◇   ◇

 父は公務員、母は専業主婦。大学時代、父に連れられて行ったボートレースで初めてギャンブルを経験した。22歳で就職後、週末にレースに通い始めた。10万円が150万円になった日もあるが、大金は無くなるのも一瞬。やがて家賃も払えなくなり、消費者金融から借りるようになった。

 「負けを取り戻そう」と次はパチンコ店へ。負けてもまた借りて行った。借金を借金で穴埋めし、10年間で12社に計約900万円を借りてしまった。職場に取り立ての電話がかかり、2回転職した。親には勘当された。

 32歳のとき司法書士に返済猶予の手続きを取ってもらい、精神科病院に3カ月入院した。診断は「ギャンブル依存症」。完治してから働こうと生活保護を受けた。だが退院後2カ月で再発した。

 図書館の新聞で、小野市の条例を伝える記事を読んだ。「血税をギャンブルにつぎ込まれてはたまらない、という指摘は当然。自分でも情けない。でも支給日になると、そんな気持ちは吹き飛んでしまうんです」

   ◇   ◇

 ギャンブル依存症は、「病的賭博」として世界保健機関(WHO)が精神疾患の一つに位置付けている。専門医らは、欧米での患者の割合を参考に、日本の患者はおよそ200万人と推定する。日本にはパチンコや公営の競輪、ボートレースなど身近にギャンブルがあり、「患者の割合は海外よりずっと多い」との指摘もある。

 にもかかわらず、日本では「問題は誘惑に負ける本人の意志の弱さ」と片付けられがち。本人も家族も病気との認識がなく、問題が放置されるケースが多かった。

 ギャンブル依存症に対応できる精神科病院も九州では、八幡厚生病院(北九州市)、西脇病院(長崎市)、菊陽病院(熊本県菊陽町)など各県に1、2カ所しかなく、治療体制も貧弱だ。

 厚生労働省は昨年11月、依存症者支援に関する検討会を発足させた。「まずは患者数など実態を把握したい」(精神・障害保健課)という段階で、問題の深刻さに比べると、国の対応も鈍い。