「生活保護費でギャンブル禁止条例」は本当に必要か

2013年2月27日、兵庫県小野市議会で提出された「小野市福祉給付制度適正化条例」が、物議をかもしている。内容は「生活保護など福祉給付を受けている人々がギャンブルなどの浪費を行わないように地域住民が見守る」というものだ。生活保護などの福祉給付を受けている人々だからという理由で、監視または見守りの対象にしてよいのだろうか? これは憲法で定められた国民の基本的人権を侵すことにならないだろうか? そもそも、誰が福祉給付の対象となっているかを、地域住民が知ってよいのだろうか?

今回と次回は予定を変更し、3月27日にも採決されようとしている本条例案について、緊急レポートする。

必要性にも効果にも疑問だらけ
小野市「適正化条例」の全貌

兵庫県小野市ホームページ。人口5万人。ホームページによれば、豊かな自然が特徴。現在も約2500戸の農家がある。育児支援にも注力している様子だ
拡大画像表示 2013年2月27日、兵庫県小野市議会に「小野市福祉給付制度適正化条例」が提出された。条例案の全文は、小野市Webサイトで読むことができる。ここではまず、条例案の内容を簡単に紹介する。目的は何なのだろうか?

「第1条 この条例は、生活保護法(昭和25年法律第144号)第6条第4項に規定する金銭給付、児童扶養手当法(昭和36年法律第238号)第5条に規定する手当額その他福祉制度に基づく公的な金銭給付について、偽りその他不正な手段による給付を未然に防止するとともに、これらの福祉制度に基づき給付された金銭の受給者が、これらの金銭を、遊技、遊興、賭博等に費消してしまい、生活の維持、安定向上に努める義務に違反する行為を防止することにより、福祉制度の適正な運用とこれらの金銭の受給者の自立した生活支援に資することを目的とする。 」

 もちろん、福祉制度は適正に運用される必要がある。誰がどう判断する「適正」なのか、「適正」の程度はどうなのか、という問題はあるけれども。それにしても、範囲の不明瞭な記述の多い条例案だ。「その他福祉制度」の範囲は何なのだろうか? たとえば、高齢化率が22%となっている小野市の高齢者福祉も含みうるのだろうか? 現金で支給される老齢年金はどうなのだろうか? 少なくとも、誰かの権利を制限したり、誰かに何かを要求したりするにあたっては、前提条件や範囲が明確にされる必要があるのではないだろうか? 「福祉的給付が不適切に利用されることを防止したい」という目的は辛うじて理解できるのだが、「遊技、遊興、賭博等」の「等」は何なのだろうか? そもそも「不適切」の判断主体は誰なのだろうか?

 どのようにも拡大解釈の可能性がある。しかも、条例案を通して、拡大解釈への歯止めとなりうる記載が見当たらない。範囲が不明瞭であれば、当然のこととして、見解の不一致による紛争が起こりうるが、紛争の可能性についても、紛争が発生した場合にどう解決されるべきかも記載されていない。