発信箱:息苦しい条例案=二木一夫

生活保護費をパチンコやギャンブルに使い果たすような受給者がいれば通報する。そういう義務を市民に課す条例案が兵庫県小野市議会に提出された。

 散財を禁じるのは当然という声があるものの、「密告の奨励」とも受け取られかねない。同県弁護士会が「市民を監視態勢に巻き込み、生活保護への差別偏見を助長する」と撤回を求めたのも、経済的困窮者の人権侵害を招くという危機感からだ。

 誰が受給者なのかはプライバシー情報で、行政が開示することはない。なのに、浪費しているのを見つけたら知らせよ、と言うのでは実効性に乏しい。先入観や誤解によるうその情報や、ねたみからの通報もあり得る。

 不正受給事件やお笑いタレントの親族の受給問題で、生活保護に対する風当たりは強い。生活保護法は、受給者に節約の心がけを求めているが、娯楽が一切許されないわけではない。他人の目を恐れ、使い道を自己規制することになれば、家計への行き過ぎた干渉に当たる恐れがある。

 大津市は昨年、いじめを発見した児童生徒にも通報を求める条項を防止条例案に含めたが、「学校がスパイ天国になる」などと反対意見が多く、削除した。いじめ自殺を止められなかった大人の側に責任があるのに、それを子供に転嫁するものという批判も強かった。

 小野市は、市と地域社会が一体となって受給者の自立した生活を支援するための条例と説明する。目的はよしとして、不正かどうかのチェックを住民に強いることは福祉行政の責任放棄にも映る。各地に条例が広がれば、「相互監視社会」を危ぶむ声も強まろう。息苦しくはないか