マニラ湾に消えた巨額資金、ユニバーサル会長の賭け

マニラにカジノリゾートを建設中のユニバーサルエンターテインメント<6425.OS>から、フィリピンに流れ出た不透明な巨額資金。ロイターの取材によると、2010年初めから前半にかけ、少なくとも4000万ドル(約34億円)が支払われ、うち1000万ドルはユニバーサルに還流した。

同社は08年にカジノ事業の暫定ライセンスを取得しており、一見すると10年当時は便宜を求める理由が見当たらない。しかし、すでに3億ドル(約250億円)を投じていた計画はこのころ暗礁に乗り上げ、事態の打開を急がなければならない状況に直面していた。日比両国にまたがる関係者への取材と内部資料から、フィリピン政官界を巻き込んだ資金流出の実態を追った。

2009年11月14日、高級ホテルが立ち並ぶラスベガスでもひときわ華やかなカジノホテル、ウィン・ラスベガスのVIP専用特別玄関から黒塗りのリムジンが次々と出発した。向かった先は3キロ離れた高級ホテルMGMグランド。ボクシングのWBO世界ウェルター級タイトルマッチが行われようとしていた。米西部の砂漠に浮かぶ娯楽の都はすでに日が落ち、ネオンが瞬き始めていた。

リムジンに乗り込んだフィリピンのアロヨ大統領(当時)の夫、ホセ・ミゲル・アロヨ氏は興奮していた。なにしろ挑戦者はフィリピンのスーパースター、マニー・パッキャオ、勝てばアジアのボクサーとして初の5回級制覇の偉業を達成する世紀の1戦だった。同行したのはアロヨ氏の取り巻きと、同国カジノ業界を監督するフィリピン娯楽賭博公社(PAGCOR)の幹部、それにフィリピン政界に深いネットワークを持つロビイスト、通称ボイシーことロドルフォ・ソリアーノ氏。

日本のパチスロ機メーカー、ユニバーサルエンターテイメントの会長として君臨する岡田和生氏の姿もそこにあった。

ウィン・ラスベガスを経営する米カジノ大手ウィン・リゾーツと、ユニバーサル自身が公表した資料によると、アロヨ氏らの滞在費は総額1万4412ドル(約120万円)。ユニバーサルがすべて負担した。岡田会長の意向を受け、フィリピン要人らの接待役を務めたのが、ソリアーノ氏だった。アロヨ氏らの滞在時の観光手配も、すべて取り仕切った。ソリアーノ氏はPAGCORの総帥ヘニュイーノ会長(当時)の側近としても知られ、同時に、岡田会長が同国でのカジノ事業を進めるに当たって「コンサルタント」として起用した人物でもある。まさに、ユニバーサルとフィリピン政官界を繋ぐ重要な「架け橋」だった。

世界が注目した1戦はアロヨ氏らの期待通り、パッキャオが王者ミゲル・コット(プエルトリコ)を12回にテクニカルノックアウトで下した。タイトル戦のファイトマネーは両者合わせて約3400万ドル(約29億円)。奇しくも、その後にユニバーサルからフィリピンに流れた不透明な資金とほぼ同額だった。