石原慎太郎が公約に「カジノ」を入れないのは、なぜ?

「カジノを日本に」と訴えてきた石原慎太郎氏と橋下徹氏が、手を結んだ。当然、日本維新の会の公約に「カジノ」が入っているかと思ったが、その文言はなかった。おかしいなあ……と思って調べてみると、ある事情が浮かびあがった。それは……。


いよいよ選挙報道が増えてきた。

 民主党から大量離党、ほかでもくっついたり袖にされたりという結果、気がつけば11もの政党が乱立したことに加え、「脱原発」とか「卒原発」とか似たようフレーズが飛び交うわで、ぶっちゃけ細かい違いがよく分かんねーや、という人も多いことだろう。

 なかには「いいオトナが政治に関心がないってのはマズいな」と分かったフリをしている方もいるかもしれないが、そこは安心してほしい。政治に関心がもてないのは、あなたのせいではない。報じ方が悪いのだ。

「中立公平」という押し売り

 メディアというのはそれぞれが取材・分析した結果を報じ、その判断は読者や視聴者に委ねればいいのだが、日本のテレビや新聞は「私たちが報じているものこそが中立公平ですよ」みたいな押し売りをする。「中立公平、唯我独尊」ではないが、自らを神のように世の中に俯瞰(ふかん)する存在だと思い込んでいるわけだ。

 だからマスコミ全社が自分たちの媒体で、11党を分け隔てなく平等に扱う。そんなの当たり前じゃないかと思うかもしれないが、そこが実は国民にかなりの不利益を招いている。

 例えば先週末、テレビ局各社は11党をスタジオに招き討論なんかをやらせていた。どこもだいたいテーマは原発と経済政策の2つぐらいだ。CMなどをさっぴくとオンエアは正味40分もないので、ワンテーマで各党の政策を訴えられるのは2分もない。当然、中味はペラペラとなり、似たりよったりの話になる。つまり、平等に報じるため、どうしても広く浅くになってしまうのだ。

 こういう選挙報道番組を2週間ぐらい流されると、日本人は素直なので「どこも同じじゃないか」とか「誰がやっても同じだろ」という気持ちになっていく。投票に行く人が年々減っていくのも当然だ。

 本気で政治に関心をもってもらいたいのなら、「記者クラブ」という利害調整の場もあるのだから各社で分業して各政党をもっと深く掘り下げるべきだ。

日本維新の会の公約に「カジノ」がない

 「今夜の報道ステーションは維新の会だけを取り上げまして、たっぷりと1時間、政策からメンバー、結党の背景にあるものまで深堀をしてご紹介します。民主党についてはニュース23クロスをご覧下さい」――。

 もし古館キャスターがこういう思い切ったことが言える時代になると、選挙報道は全く違った景色になる。各政党の「裏」がもっとよく見えるからだ。

 例えば「日本維新の会」など今の報道でいうと、石原慎太郎代表が原発をやめないと言って、橋下徹代表代行がそれをどう取り繕うかみたいなところにスポットが当たるが、もっとディープな「カジノ」とかの話もできる。

 ご存じの方も多いと思うが、石原代表と橋下代表代行は単にウマが合うだけではなく、首長時代に「日本のカジノ」を目指して尽力してきたという共通点がある。

 石原代表は今年6月にはアジア主要都市が集う国際会議で、「そこらじゅうにパチンコ店があるように、カジノがあってもいい」と発言しているし、橋下代表代行も今年2月、日本維新の幹事長・松井一郎氏(大阪府知事)とともに、マカオのカジノ王、スタンレー・ホーの息子、ローレンス・ホー氏と会談し、4年以内にカジノの道筋をつけると宣言している。

 そんな2人が手を組んだ。誰もが「チーム・カジノ」だと思うので、日本維新の会の公約には、景気対策としてカジノが盛り込まれていると思う。事実、大阪維新の会では入っていた。

 ところが先日発表した公約にはカジノのカの字すらない。これまで賭博の何が悪いと主張して、選挙を勝ってきた2人が今さら引っ込めたのはなぜなのかと首を傾げていたら、3日ほど前に気になるニュースをロイターが報じていた。




 「米当局がユニバーサル会長を聴取へ、フィリピン資金疑惑めぐり」

 パチスロメーカーの雄・ユニバーサル(旧・アルゼ)はフィリピンでカジノリゾートを計画しており、その認可をめぐってフィリピンのグロリア・アロヨ前大統領やカジノ公社会長に近い人物に3000万ドルの不正な資金を送ったのではないか、とロイターが先月16日に報じた。それを受けて、米国のカジノ規制当局が動いたという話である。

マスコミは政治の「裏」を報じない

 日本のマスコミは静観しているが、フィリピンでは前大統領のスキャンダルということで、たとえるなら「ロッキード事件」ほどの注目を集めているとか。

 この話がなぜ日本維新の会に関係あるのかと思うかもしれないが、大いにある。ユニバーサルの岡田和生会長は石原氏の後援者として有名だ。おまけに、ユニバーサルがフィリピンのカジノ用地を購入した際、実務で動いたのは「石原銀行」と呼ばれた新銀行東京の元執行役・丹治幹雄氏だ。

 しかも、石原代表の三男・宏高氏はフィリピンのアキノ大統領のもとにホームステイもしていたほど親しく、フィリピン人脈は広い。ユニバーサル関係者が言う。



 「フィリピンのカジノ公社の人間と、岡田さんをつないだのは宏高さんですよ」

 日本のカジノ構想が現実になれば当然、カジノ運営経験のある日本企業に白羽の矢がたつ可能性は高い。となると、石原代表と海の向こうの疑惑が急に身近に感じられる。

 ロイターの報道が事実かどうかは定かではないが、石原代表と橋下代表代行がリスクヘッジとして、カジノを引っ込めたのは容易に想像できる。

 このような話はスキャンダルではない。政治はきれいごとだけではないのだから当然、自らの事業のために政治家を応援する人もいる。そういう現実が分かったうえで、政党や政策を選べばいい、と個人的には思うのだが、なぜかマスコミはこういう「裏」を国民に教えてくれない。誰と誰がくっついたとか、誰の主張がブレたとかをしつこく報じ、頼んでもいないのに勝手に「争点」を決めてしまう。

 国民は、原発と消費税だけで票を投じるわけではない。幸い日本には「どのニュースも同じじゃねーか」と思ってしまうほど新聞もテレビも多い。「どの政党も同じじゃねーか」と国民が思わぬよう、たまには違う視点も提供してくれてもいいのではないか。