パチンコ大手・ダイナムが香港市場に上場できた理由

悲願がかなった。パチンコホール大手ダイナムジャパンホールディングスが8月6日、香港証券取引所に上場した。

 日本におけるパチンコホールの市場規模は約20兆円。これだけの巨大市場にもかかわらず、過去にホール運営会社の上場はない。メーカーを中心に多くのパチンコ関連企業が上場しているにもかかわらず、だ。足かせとなっているのは、ホール運営に付きまとう適法性の問題だ。





 日本の刑法は賭博行為を禁じている。また、パチンコ業界を管轄する「風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律(風適法)」は、現金や有価証券を賞品として提供することや、客に提供した賞品を自社で買い取ることを禁じている。

 そのため、パチンコ業界では「三店方式」という営業形態が採られている。ホールは卸問屋から景品を調達。客は出玉を景品と交換し、景品交換所に持ち込んで換金する。景品交換所に持ち込まれた景品を卸問屋が買い取り、ホールに卸す。

 ホール、景品交換所、卸問屋の三店が関与することで、直接的な現金の提供を回避する仕組み。風適法を所管する警察庁は、三店方式について「ただちに違法とはいえない」としてきた。が、監督官庁の解釈次第で違法とされる懸念は消えず、グレーゾーンともいえる。

 「換金行為」ほど知られていないが、「クギ調整」の問題もある。パチンコ台の盤面に打ち込まれているクギの角度を調整し、出玉率をホールが操作することは、風適法で禁止されている。だが、台が稼働し、玉が当たるうちに、自然とクギの角度は変わってくるため、クギの調整は店舗運営で普通に行われている。

 2005年12月には、パチンコ準大手のピーアークホールディングスがジャスダックに上場申請したが、上場はかなわなかった。その理由は明確にされていないが、合法といい切れない点をクリアできなかったからともいわれている。当時、上場準備を進めていたダイナムも「あきらめざるをえなかった」(関係者)。

■上場目的はカネより信用

 今回も主幹事証券はなかなか決まらなかった。では、最終的に法律問題をどうクリアしたのか。

 換金問題では、景品交換所、卸問屋とパチンコホールは、資本的、人的関係をいっさい持たない独立した業態であると説明。そのため、ホールの外に出た景品は、客がどう扱おうがホール運営者は関知しない。加えて、卸問屋は数多くの景品交換所から景品を買い取り、ダイナム以外の店舗にも卸しているため、景品の還流はないとした。

 クギ調整については、「当社店舗で行っているのは、メンテナンスにすぎない」と説明したという。クギの調整は、メーカー出荷時の状態に戻すための手入れであり、出玉率の操作ではないとのロジックだ。

 パチンコという業態はカジノとは異なる日本独自のもの。目論見書では、日本の法規制とパチンコの営業形態についての解説に多くのページを割いた。それだけ説明しても、上場前の機関投資家回りの反応は芳しくなかったという。

 今回の上場による調達予定額は約200億円とみられており、調達資金は新規出店などに充当する予定。ただ、マルハンに次ぐ業界2位、売上高9083億円、営業利益302億円、フリーキャッシュフロー429億円(12年3月期)を稼ぎ出すダイナムにとって、上場の主目的は資金調達ではない。

 パチンコホールには、射幸性や中毒性、反社会的組織との関係や脱税など、ネガティブイメージが根強く付きまとっている。日本でかなわなかった上場を、海外市場で実現することで、自社と業界の社会的地位を高めることが最大の目的だ。