カジノ : Global Gaming Expo Asia 参加所感

木曽 崇(キソタカシ)

国際カジノ研究所 所長
エンタテインメントビジネス総合研究所 客員研究員
早稲田大学アミューズメント総合研究所カジノ産業研究会 研究員




イベント参加の所感:


1)マカオ市場
マカオ市場に対する業界関係者の関心は、現在の繁栄がいつまで続くのかの一点に集中しています。マカオは前年度比.35%upという依然として高い成長を維持していますが、この異常に加熱している市場に高いリスクがあることは業界関係者は全員認知しているところ。マカオ政庁も様々な市場抑制策を講じていますが、その行政手腕によって上手くソフトランディングさせることができるのか? はたまた、中国経済バブルの崩壊によってハードランディングをせざるを得ないのか? これが多くの専門家によるセッションの中で語られ、質問されている内容でした。

2)シンガポール&フィリピン市場
業界の次なる関心は、シンガポールとフィリピンの両市場。シンガポールに関してはすでに数量の限定された開発権が特定事業者に渡り、この先当面の間、ライセンスの新発行は見込めない市場です。なので、シンガポールに関する多くの論議は、羨望と嫉妬が微妙に混ざり合いながら語られるものでありました。一方で、そのシンガポールに対して今、まさに様々なカジノ事業者がコミットをし始めているのがフィリピンであり、業界の関心はシンガポール市場の現在の繁栄に対して同一商圏を争うフィリピンがどのように立ち回ってゆくのか? シンガポール入札で勝てなかったその他事業者にとって、新天地となるのか? これが盛んに語られていた印象です。

3)将来市場:日本、韓国、台湾
そして最後の業界の興味の対象が日本、韓国、台湾の極東アジア三地域におけるIR導入競争です。ただし、残念ながら私が日本市場に関して感じた事は、市場の潜在力に対する期待は大きいものの、総じて合法化の実現性に対しては懐疑的なスタンスの人が多いという事。これまで日本からあたかも明日にでも市場開放が行われるかのような現状を誇張した情報が海外に対して発信され続けてきたこともあって、日本はすでに「狼少年」的な評価を受けてしまっている状態です。

実は、今回私にスピーカーの依頼が来るにあたって、運営側から口を酸っぱくして要請を受けたのは「イベントの性質からプロモーション的な内容は求められていない。日本の現状を客観的な立場から解説して欲しい」とのことでした。私としては「強気の情報発信の割には全く動かない市場」という現在の評価に対して、「何故これほどまでに時間がかかっているのか」、「どのような合意形成が必要となっており、今、我々がどの地点に居るのか」をご説明し、牛歩ながらもコツコツと積み上げを行っている我が国の姿を皆様にはご理解頂けたつもりです。

4) その他
その他、私が盛んに質問を受けたのはWynnとの係争やフィリピン、韓国市場への進出など業界に話題を振り撒いているユニバーサルに関するもの、また先日韓国カジノ企業との提携を発表したばかりのセガサミーに関するものなど、「日本市場」というよりは、海外に向けてすでに事業を動かし始めた「日本企業」に関するものが多かったです。この点からも、動かない日本の政治を追いかけるよりも、しびれを切らして実業を動かし始めた事業者に興味が集中している海外業界人のスタンスがうかがい知れます。


最後に展示会に関してですが、技術的に「新しい」といえるものは、スマートフォンを操作端末として利用し、マシンゲームオペレーションを行うシステムを開発したヨーロッパメーカーさんはちょっと注目に値しました。あと、この4月にオンラインゲーミングへの業界参入を発表したばかりのアリストクラート社などからは、リアルカジノのスロットオペレーションシステムをオンライン向けに転用したゲームオペレーションシステムが展示されていましたかね。この分野はアリスト社のみならずIGT社、Bally社など、多くのリアルカジノ機器メーカーが参入を表明しているところですから、今後の展示会における目玉となってゆくことでしょう。これまで家庭用ゲーム機が中心であった東京ゲームショウが、近年、ソーシャルゲームなどに移行しつつあるのと同じ現象がギャンブル機の展示会であるG2Eにおいても起こっているということです。

最後に展示場では、コナミ社、アルゼ社、マツイゲーミングマシン社、エンゼルプレイングカード社、JCM Global社など、日本メーカーの皆様もかなり大きなブースを構え、気を吐いて頑張っていらっしゃった事を付け加えておきます。個人的にはパーツメーカーから最終製品メーカーへの転身を模索するJCM社の動向に注目しているところ。いずれにせよ、関係者の皆様はお疲れ様でした。