いわき市長のパチンコ店発言 賛否渦巻く

福島県いわき市の渡辺敬夫市長が福島第1原発事故で避難した双葉郡の住民について「賠償金を受けて働かない人もいる。パチンコ店も満員だ」と述べたことをめぐり、賛否が渦巻いている。発言の背景には、市民と避難者の間の摩擦や、双葉郡の一部自治体が集団移転する「仮の町」の候補地に同市が挙げられた問題があり、受け止め方を複雑にしている。






 いわき市の運転手男性(60)は「よく言ってくれた。パチンコ店に行くと、避難者をよく見掛ける。市民も同じ思いだ」と発言を支持する。
 同市の自営業男性(49)も「市民から不満が出るのは当然」と理解を示す。「いわき市も地震と津波で被災したのに、原発事故の避難者は賠償金をもらえる。ねたみにつながりやすい」と語る。
 「そういうことを言っている場合ではない」と批判するのは同市の会社員女性(27)。「自宅と古里を追われた以上、手を差し伸べるのは当然。住民の流入で需要が増え、いわきの経済にはプラスになる」と話す。
 いわき市に避難する双葉郡の住民の間でも複雑な思いが交錯する。大熊町の無職男性(68)は「パチンコに行くのは仮設団地でも2、3人。家も畑も失い、行き場がない。市長には『働ける場所をいわきにつくる』と言ってほしい」と訴える。
 同町の無職男性(72)は「ごみ処理や上水道整備でいわき市に負担がかかっていると聞いた。市長は言いにくいことを言葉にしたのだろう」と推察していた。
 市役所には10日、十数件の意見が寄せられた。大半が避難者からで「好きで避難しているわけではない」「働きたくても働く場所がない」と抗議する内容だった。
 いわき市は2万5000人の避難者を受け入れている。避難者のパチンコ店通いやごみ出しで市民から苦情が寄せられるなど、あつれきが生まれている。仮の町構想でも国や福島県、関係自治体から市に説明がなく、市側の態度を硬化させた。
 鈴木英司副市長は「仮の町をつくるなら土地を確保し、水道や排水処理施設を整備しなければならない。市民が我慢している中、ほかの住民に提供すれば『何で』という声が出る。それなのに正式な話はなく、市長の不快感につながった。パチンコ店が満杯だから不快感を覚えたわけではない」と市長の思いを代弁する。
 被災地支援に取り組む福島市の詩人和合亮一さん(43)は「震災から1年がたち、県民の間に溝が生じている。福島はこれからが深刻なピンチ。カネをあてがえばいいという単純な補償でなく、溝に橋を架け合う支援が必要だ。働く喜びを回復できる手だてを考えなければならない」と話している。